2015年5月19日火曜日

ハッピークリーニング(5月初めの)

クリーニング屋にコートとスーツを預ける。
新規会員は半額となる、高架下に新しくできたクリーニング屋。

全部で十点となります、と四十代半ばくらいの女の店員が嬉しそうに言う。
半額の対象となるのは十点までだった。

武蔵境から武蔵小金井の高架下に続々とお店ができている。
時間貸しの駐輪場から、ドラッグストア、カフェ、居酒屋まで。
ここ一年くらいの話だ。中央線の高架化によって生まれたスペースの有効利用(商業利用)といったところか。

黒いスーツのズボンの、後ろポケットのボタンに引っかける輪っかがとれかかっていたので、これは修理できますか、と聞くと、服のお直しはとなりのお店になりますので、と言われた。

クリーニング店には、簡単な服のお直しをやってくれる店もあると聞いたことがあるから、もしかしたらこのとれかかった輪っかもなおしてくれるんじゃないか、と期待したのだが、どうもこの店ではそういうサービスは行っていないらしい。価格の安さが売りのチェーン店だから、これくらいなら直しておきますよと、機転を利かすわけにもいかないだろう。

むしろ、僕が店員の声や表情から読み取ったのは、同じ高架下の他店に対する心配りのようなものだった。高架下にできた新しいお店のなかには、開店して十ヶ月も経たないうちに看板を下ろしたものもあった。

高架沿いには、舗装されて間もない道路がまっすぐのび、電灯や細い並木が等間隔に並んでいる。
僕はそれを見るたび、『化物語』に出てくる街並みのようだ、と思うのだった。

2015年2月22日日曜日

あったかい

なんとなく寒い日が続くと、気持ちも滅入ってくるというものだ。

夏にクーラーの効いたカフェやデパート、ファミレスを転々とするように、冬も暖房のきたカフェやデパートやファミレスを転々とすることがあってもいいのではないだろうか。
うん、誰も反論していない。

ある作家は自分の生まれ月である11月を、1日で一番日が短い時期で、なんだか損した気分になるから嫌いだ、とエッセイかなにかで書いていた。もう2月も終盤になって、日もだいぶ長くなってきたはずだが、それでも寒いからといって外へ出ず、家の中で縮こまっているのであれば、日が短いことと大差ないのではないだろうか。うん。

寒い冬(畳語的?)にはあたたかさというものが、それだけで安心感をもたらしもする。たとえば、シチューのCMみたいな。あるいは、心情を表すメッセージとなったりもする。たとえば、手編みのマフラー。得意料理はシチューなんです、今度よかったら食べに来ませんか。とか。またシチューになってしまった。

個人的には、早く3月下旬くらいになって欲しいという気持ちがある。

2015年1月6日火曜日

ホームランド

実家に帰り、小学校来の友人が運転する車に途中の駅まで迎えに来てもらう。
白いホンダのなんとかという四駆の自動車。名前は口にしていたと思うが、聞いたそばから忘れてしまった。

昔から知っている友人が運転する車に乗るというのは、なんとも不思議な気分だ。
大学生のころにはもう友人の車に乗せてもらっていたけれど、いつになっても慣れることはない。僕がいまだに免許を持っていないからだろうけれど。
親の運転する車に乗って、一緒に学校や駅への送り迎えを受けていた彼が今は運転席に座っている。

10代の頃、車を運転して事故を起こす夢をよく見た。
事故を起こす場所も大体決まっていて、高校の近くにある大型家具店に突っ込んではすごすごと歩いて帰るというのがお決まりのパターンだった。
ハンドルを切ってもうまく曲がらない。アクセルを踏んでも(どのペダルがアクセルかよくわかっていなかったのだけれど)、思うように進まない。

帰る途中、パチンコ店に併設されたコーヒー屋に立ち寄った。
田舎ではよく見かける大きな駐車場のあるパチンコ店。その手前に厳選した豆を使用した「スペシャルティコーヒー」を出す店があるのだった。

車を降りてドアのロックをかけるのに苦心していると、友人がキーについたリモコンをピッと一押ししてロックしてくれた。
そうだよね。