口角だけあげて目はぴくりともしていない、笑っているのに目が怖い、というあの表情。
そんなものだから、マナー講習などではその先手を打つかたちで、目から下をA4の配布資料で隠し、目で笑う練習をしていたりするものだ。
では、そのような訓練を経た人と相対するとき、私たちはどうすればよいのか?
あなたは満面の笑みを浮かべているけれど、それはビジネス上の愛想笑い? それとも、愛想なんて尽きているけれど訓練の結果、反射的に浮かぶようになった笑い?
破顔一笑、目は上方に曲がり、口は大きく開かれピンク色の歯茎までむき出しにして笑っているのに、それでも愛想を尽かしているのですか?
きみ、銀行や飲食チェーンのお姉さん方に、そんなことで恋しちゃダメだ。
彼女たちはホスピタリティに関しては、異様なほどに高いプロ意識の持ち主。
お客様、あるいはビジネスパートナーであったとして、それ以上でもそれ以下でもない。
ところで、鷲田清一は顔について次のように書いている。
たとえ顔一面にスマイルがあふれ返っていたとしても、声やただずまい、さらには服装が笑っていないなんてことはあるのだろう。しかし、相手はプロ中のプロ。そんなことさえすっかりお見通しなのだから、打つ手がないことは最初から決まっていたのだ。
…というわけで、桜もほどよく開花して、浮かれ気分もつかの間の春の嵐も過ぎた今日、いかがお過ごしですか?