2014年1月26日日曜日

「ダレン・アーモンド追考」をみた

東京駅から高速バスみと号に乗り、水戸へ。水戸芸術館にて「ダレン・アーモンド追考/Darren Almond — Second Thoughts」(http://arttowermito.or.jp/gallery/gallery02.html?id=374)という展示をみてきた。その感想というか、批評というほど大層なものではない、個人的なメモを残しておこうと思う。

All Things Pass

この一文が刻まれたプレートに、展示会場中で繰り返し遭遇する。すべては過ぎ行く、と入り口で渡された資料では訳されている。そして、入り口で来場者を出迎え、一斉に時を刻む壁一面のデジタル時計(表示は一部ずらされている)。月の光を利用した長時間露光の写真で知られるこの作家にとって、時間というのはやはり重要なファクターなんだと実感する。

そもそも、ビデオ・インスタレーションという表現を主に使う作家である以上、時間に対する意識がないわけがない、のかもしれない。本展でも多くのビデオ・インスタレーションをみることができたが、なかでも一番心をつかまれたのは、滋賀の比叡山で夜中に行われる荒行に同行し、カメラを回したものだった。

千日回峰行というらしい。修行僧が真っ暗闇の山中を練り歩いて、ポイントポイントで拍子木を打ち、お経を唱える姿を赤外線カメラでひたすら追いかける。ちなみに、展示の構成はというと、来場者は手前に置かれたソファに座るように促され、それ以上前には行かないように指示される。目の前には6面ほどのスクリーンが楕円上に180度展開されており、正面を向くと視界がスクリーンで覆われるようになっている。一番奥の細長いスクリーンでは延暦寺(たぶん)で護摩を焚き、読経する僧侶の姿が映し出される。その他のスクリーンでは、山中を行く修行僧の後ろ姿と同時に、その僧の周りに広がる(と思われる)林や地面などが映し出され、「映像のキュビズムや〜」という身も蓋もない感想が出てくるしかけとなっている。

ソファに座り、じっと対峙していると、だんだんと没入し、漆黒に包まれた木々や地面を踏みしめる音が身に迫ってきて、恐ろしくなってくる。ただ、現実のリアルな追体験だと思っていると最後にはしごを外されることになる。木々が途切れた開かれた場所で石製のベンチのようなものに腰かけ、お経を唱える場面。そこで、僧を横や後ろからとらえた映像と同時に、僧が立ち去った後(あるいは来る前?)のベンチの様子が映し出されるのだ。

多視点ということになると、文学部出身の身としてはつい、芥川の薮の中!と思ってしまうのだが、そこに時間軸を加えて「多時間性」(なんて言葉はないだろうけど)を織り込んでくるとは。ここに、なにかがあるな。考えをめぐらせてはみるけれど、すぐに言葉にしてしまわず、自分のなかである程度寝かせて、醸成させたほうがよいのかもしれない。

最後に、日本の桜を写した写真のシリーズにも触れておきたい。これも夜中に長時間露光したものかな、と思っていると、どうも違うらしい。よく見ると、花びらがぶれていない。僕の予想では、昼間にシャッタースピードを速くして(絞りもしぼって)撮影し、超露光不足にしたネガを増感現像して、そこからプリントしたんじゃないかと思うのだけれど、実際どうなんだろう?

2014年1月19日日曜日

粗食であること

粗食であることを今さら恥じてみてもはじまらない。

お前はいかにも食事に関心なさそうやもんな、などと言われると、なにを、と思うのだが、やはりそういう面もあるのかもしれない。

加工することの喜び、わかります。僕も大学に入りたてのころは、オーブンレンジでチャーシューを焼いてみたりもした。けれど、時も思いもながれにながれ、行き着いた先は、カレーに焼きそば、たまに蕎麦。

腕によりをかけた料理を食べる喜び、わかります。けれど、お店に入るのもなかなか面倒くさかったりする。腹をクチクするだけの食事が悲しいのはわかっているけれど、帰りの駅でおにぎりを買って済ませてしまうことだってある。

料理が一番楽しいのってやっぱり誰かのために作るときだよね、などと言われると、なにを、と思うのだが、やはりそういう面もあるんだろうな。

料理で一番何が好き? と聞かれたとき、思わず口を出たのは「お寿司」でした。

2014年1月11日土曜日

あけましておめでとう

首都高速の高架が見える川沿いのベンチで考えるふりをしている。

「あけましておめでとうございます。本年もひとつ」

感じるのは歯のうずき。肌を刺す1月の風の冷たさ。
高速道路が視界の隅で交差する。車の走行音が途切れることはない。

ランチ時、川沿いではサラリーマンが革靴をスニーカーに履き替え、走っているふりをしている。季節を問わず往来する観光船が今日も川を遡上している。

「おめでたくない人も、本年もひとつ」

年賀状に東北のまつりの写真をプリントして送ったら、東京の秋祭り?と返事がきた。
来年から、年賀状は往信・復信スタイルでいこうと思う。