2015年5月19日火曜日

ハッピークリーニング(5月初めの)

クリーニング屋にコートとスーツを預ける。
新規会員は半額となる、高架下に新しくできたクリーニング屋。

全部で十点となります、と四十代半ばくらいの女の店員が嬉しそうに言う。
半額の対象となるのは十点までだった。

武蔵境から武蔵小金井の高架下に続々とお店ができている。
時間貸しの駐輪場から、ドラッグストア、カフェ、居酒屋まで。
ここ一年くらいの話だ。中央線の高架化によって生まれたスペースの有効利用(商業利用)といったところか。

黒いスーツのズボンの、後ろポケットのボタンに引っかける輪っかがとれかかっていたので、これは修理できますか、と聞くと、服のお直しはとなりのお店になりますので、と言われた。

クリーニング店には、簡単な服のお直しをやってくれる店もあると聞いたことがあるから、もしかしたらこのとれかかった輪っかもなおしてくれるんじゃないか、と期待したのだが、どうもこの店ではそういうサービスは行っていないらしい。価格の安さが売りのチェーン店だから、これくらいなら直しておきますよと、機転を利かすわけにもいかないだろう。

むしろ、僕が店員の声や表情から読み取ったのは、同じ高架下の他店に対する心配りのようなものだった。高架下にできた新しいお店のなかには、開店して十ヶ月も経たないうちに看板を下ろしたものもあった。

高架沿いには、舗装されて間もない道路がまっすぐのび、電灯や細い並木が等間隔に並んでいる。
僕はそれを見るたび、『化物語』に出てくる街並みのようだ、と思うのだった。