2014年12月5日金曜日

ちゃんぽん長崎

フードコートと称するスーパーの地下1階の飲食店が集まった一角で、長崎ちゃんぽんを食べていた。

子供が泣いていた。3歳にも満たないくらいの女の子。その側で母親とその友人(?)の女性二人が気にせず談笑している。女の子はソファの上によじ登ったところを無理やり下ろされて叱られ、不機嫌になっているのだ。どうやったらその子に、なぜソファに登ったらいけないか納得させることができるのか、僕には分からない。

女の子は警報を鳴らすように、泣き叫んではやめ、泣き叫んではやめを繰り返した。わたしはいま絶望している!と全生命を使って表現していた。すぐに、別のことに興味が移って、ころっと泣くのをやめたとしても(実際にやめたのだけれど)、その瞬間のその泣きは妙に心を打つものがあった。

となりで英語の参考書を開いて、ルーズリーフに英文を書き写していた男子高校生も心を動かされていたに違いない。
いたたまれなくなった彼は、席を立って長崎ちゃんぽんを買ってきたくらいだから。

フードコートの上の階では、クリスマスカードが並べて売られていた。
こっちのカードは、ボタンを押すときよしこの夜。
こっちのカードは、ボタンを押すとJoy to the world。
子供たちが群がっているところでは、ありのままで〜が流れていた。

クリスマスにはいい思い出がない。が、悪い思い出もない。
ふつうの思い出ならいくつかある。

とりあえず、これからしばらくは、クリスマスにしか興味がない(といってみる)。

2014年10月20日月曜日

興味がない

あの返却口に何が返却されるのか気になる。

昨日の夕方近く、自分が住むマンションの自転車置き場の前で、パンクしたクロスバイクのチューブを交換していた。そこに、電動自転車を押しておばさんが入ってくる。こんにちは、と小さな声であいさつする。見たことのないおばさん。ひょっとしたらセールスの人かもしれない。相手も少しけげんそうにしていた。けれど、自転車置き場の側で後輪を丸ごと外し、タイヤからチューブを引っ張り出している姿を見て、僕がこのマンションの住人であることを疑ったりはしないだろう。

駐輪場にその電動自転車を停めたければ、どうぞ。
パンクの修理、なかなか大変そうね。
どうぞ、お構いなく。
ええ、そうさせてもらうわ。それに、私はここの住人じゃないし。

そんな会話が、音もなくすれ違っていたのかもしれなかった。けれど、お互いの関心の地平はそこまで延びることはなかった。私はあなたに興味がない。

それから、数分も経たないうちに、おばさんは別のおばさんを連れて、駐輪場から自転車を出し、去っていった。その間、僕は顔を上げることもなく、黙々とチューブの交換に励んでいた。

2014年9月15日月曜日

中央線快速東京行き

夢、というとき人は空を見上げ、欲望、というとき人は下を向く。
本音を語るときは、じっと目を見つめている。

あなたの「夢」はなに?
武蔵境のフリーペーパー「iisakaii」vol.13に、そんな質問の回答を集めたコーナーが掲載されていた。

「退職後の人生を楽しむために、若いうちに沢山働く」(10代女性)
「幸せな家庭を築き親孝行をしたい。将来は武蔵野市に住みたい」(20代男性)
「結婚して退職しパートとして働きたい」(20代女性)
「悔いなく人生を終えたい」(60代男性)

中央線で遭遇する名前も知らない人たちも、こんな夢を抱いて電車に揺られているのだろうか。毎朝毎晩、親や友人とだってしないくらい身体を密着させ合い、黙ってスマホの画面をみつめつつ運ばれていく人たち(オレ含む)。

小沢健二の曲に「戦場のボーイズ・ライフ」というのがあったけれど、通勤電車に乗っているとまさに戦場という感じ。戦場のリーマン・ライフ(〜報われる日を信じて〜)……、でも乗っているのはサラリーマンだけじゃないよね。

まあ、このアンケートには、ほかに「世界征服」といったチャーミングな回答もあったのだけれど。